(コラム)ワインの品質を左右する「酸化」とは?酸化とワインの関係性を解説!
ワインの品質を左右する「酸化」とは?酸化とワインの関係性を解説!
ワインを語る上で、「酸化」を無視することはできません。
酸化はワインを劣化させる化学反応である一方で、ワインを素晴らしい熟成に導くといった二面を持っています。
しかし、飲食店でワインを保存、さらに抜栓した後で注意すべきは前者です。
ここでは、ワインの酸化について詳しく解説していきたいと思います。
ワインの酸化について
ワインの酸化について下記にまとめました。
・ワインの酸化とは?
・ワインの酸化の要因はフェノール
・ワインが酸化すると何が起こる?
それぞれ解説していきます。
ワインの酸化とは?
ワインの酸化とは、空気中の酸素がワインに溶け込むことで起こる反応です。
ワインが酸化されると香りが変わったり色味が変わったり、風味が変化するなど、好ましくない反応が起こります。(一部のワインはポジティブにはたらく)
ワインを飲んだ時、どことなくフルーティーさが失われていたり、白ワインなど明らかに褐色化している際、多くのワイン関係者はそのワインを「酸化している」と表現します。
熟成については軽く後述しますが、購入した後のワインのほとんどは、できるだけ酸素に触れさせないように保管しておくことが重要です。
ワインの酸化の要因はフェノール
ワインの酸化というと、ワインの香り成分や色味の成分などが酸素と反応し、悪い方向へと変化していくと思われがちです。
過酸化水素は非常に反応性が高く、香り成分や風味に関連する成分などとスピーディーに反応してしまうことから、酸化特有の現象が起こるといった構図になります。
また、ワインに含まれている金属系の成分も酸化に関連しているとのことです。
ワインが酸化すると何が起こる?
ワインが酸化すると、上記で解説したように香りや風味、色味が変わります。
アセトアルデヒドは、シェリー酒などにとっては重要な成分ですが、古いリンゴのような焦げたよう、独特な香りを出すことがあり、フレッシュ&フルーティーなワインとの相性はよくありません。
酸化した白ワインを嗅いだ時、なんとなく酢とは違うツンとした臭いにも関連するでしょう。
そのフルーティーさが無くなった上に酸素による悪影響で劣化臭が発生すれば、そのワインはもはやポテンシャルを発揮することは不可能でしょう。
ワインにとってポジティブな酸化とは?
上記で解説したように、酸化はワインにとって大敵ともいえる反応です。
・ワインの樽熟成
・ワインのストラクチャーをつくる
・あえて酸化させて長持ちさせる
・ワインを開かせる
それぞれ解説していきましょう。
ワインの樽熟成
ワインにとって酸化がポジティブに働くとすれば、やはり樽熟成が関連しているでしょう。
樽は微量の酸素を透過することから、樽熟成は生産者が意図的にワインを酸化させているといってよいでしょう。
樽熟成によって赤ワインのタンニンやアントシアニンなどが酸素と反応することで味わいがまろやかになったり、色味が安定化するといったポジティブな反応が得られます。
白ワインの樽熟成は主に樽香をつけたり、樽由来のフェノール成分の析出を期待するなどありますが、スタイル的に微量の酸化であればむしろポジティブに働くといった流れです。
ワインのストラクチャーをつくる
ワインは樽熟成時だけでなく、ピジャージュや醸しの段階、澱引きなどの過程でも酸素と接触させられることがあります。
ピジャージュや醸しなどは、その後のアルコール発酵の過程で酵母によって二酸化炭素に生成されるので関連しませんが、澱引きの段階となれば話は別です。
しかし、あえて酸素と触れさせることで平坦な味わいではなく、ストラクチャーのある複雑な味わいを生み出すことができるとされています。
あえて酸化させて長持ちさせる
一部のワインは、あえて酸化させた上で長持ちさせるといった方法を取っています。
また、安価なワインの中には一度、徹底して酸化させてフェノールと反応させた後、その上澄みだけを取ってワインを造ることで味わいを長持ちさせるといったものもあります。(安価な無添加ワインなど)
ワインを開かせる
ワインを開かせる、といった言葉を聞いたことがないでしょうか。
一部のワインは、長年空気に晒されていないことから還元的になっており、硫黄などの香りが若干することがあります。
もちろん、抜栓から長時間放置すれば酸化してしまうため、飲みきるタイミングが重要になってきます。
酸化しているワインは事前に選べるか?
飲食店などの場合、購入したワインをお客に提供するというのが一般的です。
グラスワインであれば、窒素スプレーを使った酸化から守ることができるボトルキャップを利用するなど、できるだけ酸化を防ぐよう努力するでしょう。
ちなみに、ワインを一度抜栓すると大量の酸素がワインに溶け込むことから、抜栓前のフレッシュな状態に戻すことはほぼ不可能とされています。
また、すぐにボトルキャップを装着してもヘッドスペースに酸素が入っていることから、窒素ガス注入タイプを使用しない限り、ワインはどんどん酸化反応を進めていくことでしょう。
こういった状況を考えた時、飲食店が注意すべきは「酸化していないワインを選ぶ」ことと「酸化しにくいワイン」を選ぶことになります。
もちろん、これら以外のワインであっても保存方法を徹底することでワインを酸化しにくい状況にすることはできるので、それも後述します。
ここからは、「酸化していないワインを選ぶ」、「酸化しにくいワイン」、「ワインの保存の注意点」について解説していきましょう。
酸化していないワインを選ぶ
酸化による影響を受けていない、フレッシュなワインを選びたい方も多いでしょう。
しかし、なかなかボトルに入っているワインが酸化の悪影響を受けているか否か、買い手としては判断することが難しい現状があります。
簡単なところでいえば、褐色化しているか否かが判断基準になりますが、そういった特徴のワインだったり、赤ワインは熟成の証になることから一概にNGとはいえません。
もちろん、フレッシュ&フルーティーな造りや品種を使いながら、こういった色味になっていたり、販売元の管理がずさんであればワインは酸化による劣化をしている可能性は大です。
それがわからない場合、チェックすべきはワインが日本に運ばれてきた時の輸送の環境になります。
以前、カリフォルニア大学デイヴィス校が研究したもので、ワインを保存する温度帯が高ければ高いほど、酸化の特徴を示したそうです。
温度が高い場合、酸化反応のスピードが高まることで知られています。
輸送時、かなりの高温ルートで輸送されていたワインの場合、飲食店に届く頃には酸化の特徴が見受けられるかもしれません。
酸化しにくいワイン
瓶詰めされたワインを完全に酸化から守ることは、ほぼできないといっていいでしょう。
つまり、どんなワインであっても酸素が微量に透過しているということです。
仮にできるだけ酸化しているリスクの低いワインを選ぶ場合、これらの順で選んでみましょう。
・スクリューキャップ
・合成コルク
・天然コルク
ただし、イタリアなど歴史あるワイン産地の場合は天然コルクのものが多く、天然コルク自体の品質にもバラつきがあるため、選ぶのが難しいといえるでしょう。
また、スクリューキャップだからといって長期間抜栓されていないものは還元臭の恐れがあり、本来のワインの香りを消し去っている可能性があるともいわれています。
天然コルクであれば、信頼できる造り手のものや、上記の輸送ルート、店頭に並ぶまでづいった保存がなされていたかを徹底して調べましょう。
そして、スクリューキャップのものを選ぶ場合、できるだけ早飲み系のワインがおすすめです。
ちなみに、ワインのpH値が低ければ低いほど酸素吸収量が少なくなるともいわれています。
ワインの保存の注意点
ワインを購入した後、そのワインが酸化から守られていても保存状態を間違えば、結局酸化ワインを提供することになってしまいます。
まず、上記で解説したように温度帯には十分注意してください。
また、天然コルクは乾燥すると収縮してしまうことから酸素透過量が増えてしまいます。
湿度70%程度の場所で保存するなどし、天然コルクが変形しないようにしてください。
全てのワインに対応させるのは難しいですが、できれば新聞紙などを瓶口にかぶせておいたり、極力酸素を通さないオリジナルな工夫も必要です。
微量の酸化透過でも、品質の魅力が劣化するワインは存在します。(とくに亜硫酸無添加のヴァンナチュール系には注意)
ぜひ、参考にしてください。
酸化に徹底して品質の高さを維持
「これくらいの酸化なら問題ないだろう」。
そう思っていても、ワインにとっては致命的なダメージを与えることがあります。
ワインはとても繊細であり、生き物です。
ぜひ、美味しいワインを提供するために銘柄やヴィンテージばかりではなく、酸化についても気を使ってみてはいかがでしょうか。