(コラム)ワインと賞味期限

ワインに賞味期限はある? 改めて確認してみようと思います。


そう言えば、ワインの賞味期限ってあるんだっけ?「熟成」しているから無いのでは??

 

ここでは、ワインと賞味期限の関係性について解説していきたいと思います。


 

 

ワインに賞味期限はない?

 

結論からいえば、ワインには賞味期限がありません

 

ちなみに賞味期限とは、「美味しさの品質が保たれる期間」のことで、「安全に食品を食べられる期間」を意味する消費期限とは少しニュアンスが違います。

 

「美味しさの品質が保たれる期間」といった定義が賞味期限だとしたら、若干ワインに当てはまるかもしれませんが、厳密にはワインにはそういった期限は定められていないのが実情です。

 

なぜ、ワインには賞味期限がないのでしょうか。



 

ワイン自体が腐ることはない

 

ワインには、さまざまな成分が含まれています。

 

赤ワインであれば、ポリフェノールが多く含まれていますし、白ワインには有機酸が多く含まれるなど、天然の酸化防止剤が混入している状況です。

 

そもそもアルコールが14度前後であることからも、腐る要素がほとんどないといったお酒がワインになります。

 

亜硫酸塩などの酸化防止剤の影響や利用の是非は別記事で紹介しますが、正しく保存されている場合、ワインが腐ることはほぼあり得ないといっても過言ではありません。

 

仮に、ワインが腐敗したり、カビが生えているといった場合、外部から細菌などが混入しているとか、微生物汚染された状態で瓶詰めされたといった形です。

 


熟成を考えると分かる?

 

「それでも、ワインを放置していれば美味しくなくなるので賞味期限の明記は必要である」といった意見もあるでしょう。

 

しかし、賞味期限は前述したように「美味しさの品質が保たれる期間」であり、一般的にその期限に迫れば迫るほど食品は劣化していることになります。

 

一方、ワインはどうでしょうか。ワインは、「熟成」ですので、上記で説明した賞味期限の定義と相反します

 

とくに、ほとんどの赤ワインが瓶詰めされるのは仕込まれた2年後であるため、その時点で熟成を経ている状況です。

 

もちろん、中には10年、20年、30年を超えた赤ワインも存在しています。

 

近年、ワインも早飲みがトレンドとなっていますが、バローロやバルバレスコなどの高級ワインは、熟成を経たことで真価を発揮するワインです。

 

ワインを熟成させることができるお酒と考えた時、賞味期限があると消費者が混乱する可能性があります。


 

ワインは「飲み頃」と表現される

 

ワインを美味しく飲める期間は賞味期限ではなく、「飲み頃」と表現されています。

 

上記で解説したようにワインを正しく保存していれば、腐ることはありません。

 

しかし、全てのワインが熟成を経て美味しくなるわけではなく、あくまでそれは一部のワインに限ります。

 

つまり、ワインにはそれぞれ飲み頃が存在し、そのピークを過ぎることで美味しさが減少していってしまうわけです。

 


ワインの「飲み頃」はいつ?

 

ワインの飲み頃は、そのワインによって変わります

 

そのため、定義することはほとんど不可能であり、生産者に直接聞いてみるしかありません。

 

とはいえ、一般論としてある程度の飲み頃は定義されています。

 

・カジュアルな赤・白ワイン 半年から1年以内

・熟成タイプのワイン :4年から10  :2年から6

 

しかし、カジュアルな赤ワインでもスペイン産などはすでに5年以上熟成させた状態で市場に出回ることがありますし、白ワインも熟成年数を経た方がよい味わいになるものが少なくありません。

 

ワインの飲み頃を知るためには、やはり生産者、専門家の意見、またその造りから想像してみるしかないのです。


 

ワインは購入時が飲み頃?

 

ワインの飲み頃の判断は難しい、といった話をしました。

 

しかし、日本で市場に出回っているワインはほとんど飲み頃の状態ともいわれています。

 

例えば、ワイナリーがワインを生産・出荷する際に飲み頃ではないものを出すことは少ないでしょう。

 

一部、高級ワインを造る生産者やこだわりのワイナリーは、あえて若いワインを出し、飲み手に熟成させることを促しますが、本当にごく一部です。

 

世の中に出回っているほとんどのワインは、国内で流通する時点ですでに飲み頃となっており、そこから熟成させるか否かは、販売者、飲食店、そして飲み手の判断に委ねられます。

 

レストランでワインを提供する際、飲み頃ではないワインをお客様に提供することはないと思います。

 

特別なお客様であればテイスティングといった意味で提供するかもしれませんが、一般のお客様に飲み頃でないワインをお勧めはしないと思います。

 


そのため、ほとんどのワインは流通後、なるべく早く飲んでしまうのが美味しく飲むコツともいえるのです。

 


ワインの「飲み頃」をキープするには?

 

国内で流通しているワインは、ほとんどが飲み頃の状態とお伝えしました。

 

熟成させたいと思っているワイン、ボルドーなどのプリムールを購入するわけでなければ、すぐに飲んでしまうことをおすすめします。

 

しかし、すぐに飲みきれない、特別な日に飲みたいといった方も多いでしょう。

 

その場合、ワインセラーへ保管しておけば飲み頃をある程度キープできるほか、熟成させることもできます。

 

ここではワインセラーでの保存以外に、ワインの飲み頃をキープするためのコツを紹介していきます。


 

ワインの保存で気をつけるべきこと4

 

ワインを保存する際、気をつけるべきことはこれら4つです。

 

・温度

・湿度

・光

・振動

 

それぞれ解説していきましょう。


 

温度

 

ワインを保存する際、気をつけたいのが温度です。

 

ワインを保存する場合、適温は13度から15といわれています。

 

赤ワインのフルボディタイプであればもう少し高い温度でも問題ありませんが、飲み頃をキープしたい場合は前述した温度帯がおすすめです。

 

ワインセラーでなければ、冷蔵庫の野菜室や温度がほとんど変わらない玄関先や押し入れなど、そういった場所で保存しておきましょう。

 

ちなみに、白ワインやスパークリングワインを1週間以内でお客様に提供するのであれば冷蔵庫でも問題ありません。

 

また、より熟成を進めたいといった場合、やや高めの温度帯で保存しておくとよいともいわれています。

 

湿度

 

スクリューキャップのワインであればさほど気にしなくても問題ありませんが、コルクタイプのワインは湿度に注意しましょう。

 

とくにイタリアワインは天然コルクが使用されているものも多く、キャップシールなどが装着されていないものもあります。

 

厳しい乾燥状態で保存すると天然コルクが収縮し、空気中の酸素が瓶内に混入し酸化が進んでしまうのです。

 

一方、湿度が高過ぎる場合はコルクにカビが発生してしまい、ワイン自体が飲めなくなる恐れがあります。ワインを保存するのに理想的な湿度は75%前後です。

 

湿度計などを利用し、飲み頃をキープできる場所を探しましょう。

 

 

ワインの飲み頃をキープするには、光にも注意しなければなりません。

 

ワインボトルは光を透過しにくいよう、黒や茶色といったものが少なくありません。

 

しかし、新鮮に見せるために緑、透明などのボトルも多く、こういったボトルの場合、光を透過しやすくワインの劣化に繋がるのです。

 

まず、ワイン(日本酒なども)は、光に含まれている紫外線などの影響を受けると、硫黄など異臭が発生することがあります。

 

ワインを日向に置きっぱなしにしたり、店舗の蛍光灯の真下でずっと保管されているなど、こういったワインは品質が劣化している可能性が少なくありません。

 

意外かもしれませんが、ワインを保存する際は光の影響も考えておくべきなのです。

 

振動

 

振動もある程度、ワインの品質維持に関連しているので注意しましょう。

 

まず、ワインなど、お酒のまろやかな口当たりは、水とエタノールのクラスター状態が関係しているといわれています。

 

強い振動を受け続けるとこのクラスターが不安定になり、口当たりの良さが損なわれる可能性があるのです。

 

人の出入りが多い部屋の床、またトラックなどの振動の影響を受けやすい部屋など、できるだけそういった場所にワインを保管しないようにしましょう。

 


ワインは繊細なお酒

 

ワインには、賞味期限がありません。

 

一方、ちょっとしたことでワインは劣化してしまい、美味しさを楽しめなくなるといった繊細さも持ち合わせています。

 

ワインを購入してお客様に提供する際には、賞味期限ではなく飲み頃を考え、さらにそのワインを美味しく保ち続けられる状況で保存してください。

 

そしてワインを飲んでいただくお客様に最大限の満足をしていただきましょう。